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2015年6月20日土曜日、東京大学本郷キャンパス医学教育研究棟にて第7回SPHサロンが開催されました。今回のテーマは「研究の『現場』を動かすとは」ということで、SPHを卒業後、研究活動で活躍されている講師の方々3名に講師としてお越しいただきました。

東大・京大・帝京大のSPHの卒業生から現役生、受験を検討中の方や、公衆衛生に興味をお持ちの方々など41名がご参加くださいまして、活気あふれるサロンとなりました。

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プログラム第1部

1.石塚一枝講師 東大SPH7期生

国立成育医療センター所属・エコチル調査メディカルサポートセンターの運営コアメンバーの医師研究員 小児科医

石塚講師は環境省の大規模な疫学調査である「エコチル調査」に研究員として関わっておられます。エコチル調査は子供の研究と環境に関する全国調査で、10万組の親子を対象とした、妊娠時からのコホート調査です。平成23年1月より3年間のリクルート期間が設けられ、参加者を13年間追跡するという、かつてないほどの大規模で長期的な調査だそうです。全国15地域で、子供と地球環境の関わりを身体発育や精神神経発達、免疫状態、成育環境、遺伝など様々な視点から調査が実施されています。

石塚講師は、この研究に関わることになった経緯から、大規模で長期的な調査だからこその工夫などをお話ししてくださいました。時間もコストもかかる大規模な調査ですので、各地域との調査方法や意見のすり合わせに時間を割くことが多いそうです。

SPHの講義で学んでいることが、実際の現場でどのように役立って行われているかということが臨場感を持って伝わってきて、大変勉強になりました。

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2.  萩原佑亮講師 東大SPH4期生

都立小児総合医療センター 救命救急科 JEMNET コアメンバー

救急医として小児の医療センターで働きながら、JEMNET(Japanese Emergency medical network)を立ち上げて運営されています。JEMNETは日本の若手救急救命のネットワークを作っている非営利団体で、日本の救命医療の改善を目的とした研究機関です。5つのミッションとして、①若手研究者の育成、②臨床現場との情報交換、③研究計画・統計解析のサポート、④研究のCollaborationのサポートと他施設研究の促進、⑤日本・世界にnew knowledgeを発信し、public healthに貢献すること、を掲げられています。

JEMNETを立ち上げた経緯から、運営のコツ、忙しい究明の現場からデータを収集し研究で成果を上げるコツなどをお話しくださいました。今までに14本の論文が英文誌に掲載され、JEMNETでの研究により、初めての論文、初めての海外学会での発表をされた方もいらっしゃるそうです。萩原講師が組織の立ち上げや運営、成果を上げることについて以下の6つのポイントを教えてくださいました。①必ず自分と同じ信念を持っている人がいる!(内発的な動機であるモチベーション3.0を大切に)、②利害関係にとらわれない強さ、③まずは研究を絞って一点集中にして質を保つ、④足りない部分を補い合うメンバー、⑤高いニーズであり唯一の存在であること、⑥スカイプやFacebookやドロップボックスなどを効率的に利用すること。

荻原講師の熱意に溢れるレクチャーは実践的な教えに満ちており、会場全体のモチベーションを大いにあげてくださいました。

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3.中村文明講師

医師 東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野 助教 国立がん研究センター外来研究員 国立循環器病センター 非常勤研究員 京大SPH10期生(4年制博士課程)

中村講師は現在国立がん研究センターにて、がん登録のデータとDPCデータを活用したがん診療の質評価に携わってらっしゃいます。その一方で、全国1万2千人を対象とした脳卒中診療医のバーンアウト調査も行っておられます。

医学部在学中から現在の研究に至るまでの経緯や現在の研究内容を教えてくださり、これから研究をしようという若手に向けたメッセージをくださいました。①研究テーマは現在「わかっていること」から少しはみ出した部分を選択すると良い、②ときにはバントでも出塁する(研究を始めたからと言ってもいきなりホームラン級の成果のみを狙いすぎず、コンスタントに努力を続ける)、③日々の鍛錬も忘れない(研究成果追いうOutputだけを求めすぎず、論文や教科書を読みInputを行うこと)、④あきらめない(研究では迷うこともあるが、続けることが大切)

大規模研究の分野でご活躍されていますが、研究をしてみたいけどまだどうしたら良いかわからない若手の視点に立って、漫画の名言なども用い気さくにお話しくださり、励まされると同時に、今後の道しるべをいただきました。

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第2部

グループに分かれて、現在の研究テーマなどについて情報交換を行いました。それに先駆けて、東大SPH1期の新様、6期の田中様が、現在の業務や研究の内容をお話しくださいました。

研究テーマについてのみならず、各グループで活発な情報交換が行われ、話の尽きない様子でした。

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懇親会

サロン後には場所を移し、恒例の懇親会が行われました。26名の方々にご参加いただき、交流を深めるとともに、今後の研究や仕事に関する情報交換が行われ、大変盛況でした。

アンケート結果

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