200806:お隣の国の医療事情は?

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お隣の国の医療事情は?
ソウル大SPHとの学生交流は?
いざ、韓国ソウルへ!

<1日目:SPHの仲間から聞く医療事情>

 ちょっとご報告が遅くなってしまいましたが、6月18日から2泊3日で韓国ソウルに行ってきました。4月下旬に開かれたPeSeTo会議(5月の事務局便り参照)をきっかけに、ソウル大学SPH学生会とメールでのやりとりが始まってはいましたが、今後どのように学生交流を薦めていくのか、ソウル大SPH学生会と会って意見交換をしたいと考えたことと、また個人的に以前から関心のあった韓国の医療現場を少しでも垣間見ることができれば、という思いからでした。

 もう一つ、大切な目的がありました。我らが1期生(1年コース、医師)の同級生で現在休学中の成倫慶さんに会うことでした。成さんはその優秀さゆえに在学中の昨年9月、韓国・漢陽大学大学病院内のリューマチ病院から呼び戻され、医師として、また医学部講師として忙しい日々を送っています。
 初日夜、仕事を終えた成さんと、成さんの下で学んでいる女性医師と遅い夕飯を食べながら、韓国の医療事情を聞きました。その後、漢陽大学に戻って構内を簡単に見学させてもらいました。漢陽大学はソウル市内にある総合大学で白い建物で統一された美しいキャンパスです。なかでも医学部は有名で校内には21階建て1200床の大規模な病院も併設しています。リューマチについて臨床から研究まで幅広く取り組むセンター機能を持つ大学病院は韓国ではここだけ。韓国のリューマチ医療の最先端で成さんは働いているわけです。

 韓国には皆保険はあるものの診療報酬が安く、しかも診療報酬がつかない検査もあり、必要な検査でも患者さんが自費で払うこともあるそうです。例えば、日本では当然のように保険でまかなわれるCTスキャンやMRIが自費となるので、検査をすると軽く10万円以上の支払いになることも少なくないのです。診療報酬が安いため、大規模な大学病院といえども医師の給料も高くできません。一方で、韓国には財閥が建てた大規模病院があり、そこに行けば医師の給料は2倍になるそうです。

 ちなみに韓国では、病院の評価に医療技術(治療成績)とマネジメント、二つのランキングがあります。医療技術の評価はソウル大学が一番。財閥運営のサムソン病院はマネジメントで高い評価を得ているという話も面白いと思いました。

<2日目:現場を感じに財閥系大規模病院へ>

 とにかく、成さんから聞く韓国の医療事情は新鮮で、韓国の医療現場を実際に体感してみたいと思いました。そこで二日目の午前中は、アジアで一番大きいともいわれる大型書店「教保文庫」へ。医学コーナーでどんな医学書が置いてあるのかを見てみました。本当はソウル大や延世大学、また成さんがいる漢陽大学といった有名大学の図書館に行きたかったのですが、学外からの入館は非常に難しいと判明して断念しました。

 教保文庫ではいろいろな分野の医学書を片っ端から開いてみました。ハングルの中にも漢字で書かれたタイトルの医学書を見つけたり、やはり看護系は韓国でもビジュアル化されていることを確認したり興味深い時間を過ごしました。韓国の看護史の本を見つけて読んでみたかったのですが、分厚くて中身がハングルばかりだったので断念しました。

 二日目午後は地下鉄で40分揺られ、有名な財閥企業のサムソンが経営する病院を見に行きました。大きな工場でもあるのかと見間違えるくらいに広大な緑に囲まれた敷地に、最先端の研究と治療を目指したサムソン病院がありました。中に入ってみると、なんと、外来のフロアでピアノの生演奏にあわせて4人の男性オペラ歌手が大勢の患者さんの前に歌を披露している真っ最中でした!

 施設は一般外来(と病棟)、癌専門外来(と病棟)と、大きく2つに分かれていました。癌専門の建物はガラス張りで、自然光が注ぎ込むような造りで、木製のいすが置かれ、中には水が流れるエリアもあり、私が見た患者さんも家族もみんなくつろいでいました。外来も癌の種類ごとに分かれ、癌患者の救急室もあります。放射線治療、血管内治療と並んでオステオパシーの部屋も。ホステオパシーとは、マッサージやカイロプラクティックのような手技を通して全身の微小関節を調節し、生体エネルギーの流れに介入することで様々な症状の緩和をもたらす骨調整療法です。アメリカの代表的な代替医療のひとつですが、日本ではまだ広く知られているとはいえません。また、巨大な施設の一角には国外から美容外科を中心としたメディカルツアーを受け入れている部門もあり、アジア各地から患者を集めていることがうかがえました。

<3日目:ソウル大SPH学生会とミーティング>

 ソウル大SPHとの交流は最終日の三日目でした。出迎えてくれたのは学生会長のパク・サンシンさん、副会長のチェスルギさん、そして事務局の、イ・ジュンウォンさん、ユン・ヒョンソクさんの4人でした。ちょうど夏学期のテストが最終日だったのですが、試験勉強の疲れも見せず約90分間の濃密な情報交換と、その後は伝統的な韓国料理で歓迎してくれました。両大学のSPHの現状を報告し合い、またお互いの専門や関心領域について情報交換をした後、今後どういう交流が考えられるかを話しました。

 半世紀の歴史を持つ大先輩でもあるソウル大SPHでは、どんな同窓会活動をしているのかも聞きました。ずっと続いているイベントの一つに年1回の山登りがありますが、昨年から教職員や在校生も加わった大規模な山登りイベントを始め、この春には200名が参加したそうです。来年は創立50周年を迎えるため、記念イベントも企画しているとのことでした。学生会長のパクさんをはじめとする皆さんはよく話しよく笑い、元気で和気あいあいとした雰囲気ですが、でも大学や学生会、同窓会の活性化や学生交流の話になると真剣に議論していました。チームワークのよさを感じました。

 ソウル大SPHはアジア各国のSPHと交流していきたいと考えながらも、実際はまだこれからというのが現状のようです。東大SPHとの交流では、お互いに関心のある分野の研究室のゼミに参加しあったり、短期交換留学のような形で集中講義を受けたりするのはどうか、いずれはそういうことがやりたい、という話も出ました。皆さんはどんな交流がしたいでしょうか?またどんな交流が可能だと思いますか?

 今年2年目の東大SPH、同窓会の活動もまだ手探り状態です。出来上がった形を求めるのではなく、「自分がこれをしたい、あれをしたい」という意志をもって活動にも参加してもらえれば、それが私たちSPH同窓会を作っていくのではないでしょうか。今秋、日本公衆衛生学会(2008.11.5~11.7)では、ソウル大学SPH学生会長からのメッセージをもらい、ソウル大学SPHとの交流を報告していきたいと考えています。ソウル大学SPHでイベントがあればその情報もホームページにアップしていきたいと思います。アジアの中で学生レベルのネットワークを作っていくために、どうぞ皆さんのアイデアと力を貸してください。

2008年6月
By 事務局長 M.M

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